自転車業界の裏話… というか、システムのお話。
お客様には関係ないのかもしれませんが、知っていて損はしないと思っています。
自転車業界の「契約」のお話
自転車業界(=輪界)のシステム。
お客様には直接関係ない… ようでいて、ノルマとか契約とかの話って実は結構関係あると思っています。
だって、欲しい自転車を近くのお店で買えないのはなぜか? とか
あるお店が、特定のブランドばかりをすすめてくるのはどうしてか? とか
なんて部分が詰まっているからです。
今回は契約について。
契約のパターン
自転車の契約は主に2つのパターンがあります。
- 1年ごとに契約があり、毎年更新する
- 取扱い開始時に契約をすれば、基本的にはずっと扱える
契約だけなら、「1」でも「2」でもどっちでもいいのですが、「1」にはノルマがくっついてくるケースが多いです。
この場合はノルマも大きく2パターンありまして
- 初回発注時に「いくら」もしくは「何台」買う
- 1年間で「いくら」もしくは「何台」買う
どっちも困るのですが、とくに小さい店には「1」が曲者です。いや「2」だってホントに重荷だったりします。
お店にとって「在庫」は敵です
「1年間でどれくらい」ならいいのですが、「初回に決まっただけ(台数・値段)買え」といわれると、店頭に自転車をズラッと並べるタイプではない店は困ります。不要な在庫をつくってしまうことになるからです。
「初回に買う」場合は、サイズやカラーなども「これなら売れるんじゃ?」という想定で買うことになるので、想定が外れた場合、店頭にずっと残ってしまいます。
店頭在庫を買うときに費用が発生しますし、買った後も「資産」「在庫」という扱いになって帳簿内容を悪くするので、本当に厄介です。
店頭在庫も必要ですが…
もちろん「店頭在庫もある程度は必要」というのもわかります。
自転車がほぼゼロのスタイリッシュなお店もアリですが、やはり店頭にある程度自転車が並んでいるのフツウという気もします。自転車メーカも「うちの自転車置いてよ」っていう気持ちもあるでしょう。
でも昨年の在庫が売れ残っているのに、「そんなの知らない今年も買ってよ」っていうのは殺生な! って思います。
昔とは違いますから
昔は自転車っていうのは、自転車屋に行って店頭にあるものを買ったんだと思います。
もしくは店員さんがすすめるものを買ったか。
でも今は、ネットや雑誌でユーザさんが情報収集をする時代。買う場所だって、自転車店とは限りません。自転車店以外のお店もたくさんありますし、通販だってある。
「店頭に置けば売れる」ってワケにいかないから、より在庫が”悪”になっています。
さらに昔と比べて自転車を売った「儲け」も減っているようです。グッズ販売や工賃という点でも厳しくなっていますから、「(不良)在庫を持つ」ことが、どんどん重荷になっているのです。
それならどうする?
じゃ、どうするか? っていいますと、自転車店としてはどうしようもありません。
たくさん売りまく… れればいいんでしょうけどね… でも、そういうのも違うと思いますし。
そうなると、契約の面倒くさいというか、ノルマの厳しい… 自分たちの店にあわないメーカとの契約をしないという方法しかありません。
これが「近くの店で好きなメーカの自転車が買えない理由」の大きなひとつです。
もともとは販売する店を絞ることで、差別化したり、売上を確保する… ためのものだったのでしょうけど。今どきは通販もガイツーもありますし、自転車店以外でも自転車が買えます。
さらに情報は何でも手に入るんですから、「ほしいけど近くで買えない」っていうのもやっぱり殺生な話だとも思います。
ノルマを抱えると…
ノルマがキツイところとの契約をがんばってしているとしたら、それはもう売りまくるしかありません。
だから、品質とか、ニーズとか無視して決まったブランドの自転車をオススメし、そればかり売ることに… なっちゃいますよね?
これが「特定のメーカをゴリ押しする」理由。
ノルマって自転車店にも迷惑ですが、ユーザフレンドリーって点でもマイナスです。
「契約」とか「ノルマ」がおかしくなってない?
この契約とかノルマ、どんどん勝手に変化しているというか…
なんだかおかしくなってきているように感じています。
契約期間短くないですか?
たとえば、今ってじわっと新車の発売が早くなってます。
以前は秋が新車シーズンでしたが、今は夏。
契約とかノルマって、「1年単位」なはずですが… 10ヶ月くらいで新たな契約を結ばされることがあったりします。
2ヶ月も短くなって、でもノルマは同じ? これってどういうことなんでしょう?
ラインナップが悪くなっても?
自転車ブーム、自転車バブルが終焉し、各メーカともラインナップを絞っています。
売りたい自転車、売れ筋の自転車がまるっと消えてしまうことも少なくありません。
ラインナップ、去年の半分やん! とか、どうしてこんなヘンなのばっかになるの? とか
それでもノルマは同じ。
こんなラインナップじゃ売れねぇよ! ってこと。
しかも売れ筋の価格帯も下方に変わっているようにも感じます。
台数制ならいいですが、金額だと余計に売らないといけません。
100万円のノルマがあったとしたら、数年前は「20万円×5台」だったけど、今は「8万円×12.5台」みたいな。
「ノルマが変わってない」けど、ラインナップも悪い、売れ筋の価格帯は下がる。つまりノルマがめちゃめちゃ厳しくなってるってことです。
自転車が売れないのって誰のせい?
自転車ブーム、自転車バブルが崩壊していますから、自転車って売れなくなってます。
それでも全然売れないわけじゃないですよ。
でも、日本中で売れる台数は減っているでしょうし、中心価格帯も下がっているのは確かだと思います。とくに実店舗に限っては。
でも自転車が売れないのって、自転車店のせいだけなんでしょうか?
「世の中のせい」ってんじゃなくて、「メーカ(代理店)のせい」でもあるんじゃないの? って。
ラインナップや、在庫の具合、カスタマーサービス、品質や見た目… そんな物が悪いから売れないって面はないんですかね?
たとえば、オススメしても全然売れないメーカがあります。みんな同じような他社の自転車を買う。これって誰のせいなんでしょう?
メーカやブランドの魅力がない、人気無いだけなんじゃ? って思います。
「今年は全体に売れませんでした」なんて言ってるのに、ノルマはそのままっていうのもね… って。
ユーザさんがほしい自転車が提供できなかったのに、売れないしわ寄せを小売店にだけおっかぶせて、「ノルマ達成できてませんね」って。
しかも、直営店がどんどん増えているメーカも多いですし、メーカが通販するケースも増えてます。「儲かるから自分のところで売りたい」それでいて「ノルマはそのまま」。
メーカは困りません。売れるのは同じでしょう。
でも、遠くのお店や通販で買った自転車、トラブルの時はどうするのか? 困るのはユーザなんですが、そこには興味がないみたい。
正直「そんなのどうでもいい」「売ったあとは知らん」的なメーカもありますし、隠しもしませんし。
時代に合わせつつ、信じた道を突き進め
どうしても愚痴や「納得できないー!」って話になっちゃって、結局何がいいたいの? っていうと難しいのですが…
でも現状の契約形態やノルマ制度は、実情に合わない古代の遺物になってきていると感じています。
以前は自転車店って、それに従うしかなかったのかもしれませんが、世の中やユーザさんが変わっている以上、自転車店も変わらないと。
侍サイクルはそういうのを(ギリギリ?)大丈夫な範囲でなんでも説明しますし、考え方が合わないメーカやブランドとは距離を置いていきます。
考えて、変化して、時代に合わせつつ自分たちの信じる道を行く…
結局、誰も守ってくれないんですから「こうしたい」「こういう店になりたい」をワガママに主張していいます。