今週はすぱっと本題から。といいつつ前提が多いのでご勘弁を。
ラーメン好きかつマンガ好きなら知らない人はいないと言ってもいいくらい有名なキャラクター。芹沢達也。
SNSでは「ラーメンハゲ」と呼ばれて、彼の名言が貼られることも多く、一度くらいは見たことある人が多いかも。
そもそも彼は料理漫画『ラーメン発見伝』の主人公のライバルとして登場。
大人気のラーメン店・らあめん清流房の店主で、フードコーディネーターとしても名を馳せており、その手腕は高く評価されている。
主人公よりもはるかにラーメンおよび飲食店経営に精通しており、強大な壁として立ちはだかるのだけれど、
彼の経験と知識に裏打ちされた「理論」がとても図星をついているというか、物事の本質を恐ろしい切れ味で言い切っており、それがX(旧Twitter)で張られるたびに繰り返しバズっている。
読者人気も極めて高いキャラなため、続編の『らーめん才遊記』は芹沢の弟子ともいえる女性が主人公となり
現在連載中の『らーめん再遊記』に至ってはついに芹沢自身が主人公となった。
で、数ある芹沢の名言の中で最も有名なものが「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」
画像が気になる方は各々で検索してください。きっと見たことあるコマのはず。殺し屋みたいな目つきの禿のおじさんがこっちを睨みながらしゃべってるやつ。
この名言の背景をごくごく簡単に説明しますと、脱サラしてラーメン屋になった芹沢が研究に研究を重ねてたどり着いたのは、鮎の煮干しを使った渾身の自信作「淡口らあめん」。
ところが世間には全く評価されず、不渡りを出し廃業寸前まで追い込まれてしまう。
そんな中、自棄になったせいで生まれたニンニクと牛脂を効かせて、鮎の煮干しの風味がぶっ飛んでしまっている「濃口らあめん」が大評判。
しかも客はこの濃口らあめんをかき消されてあるはずもない「鮎の煮干しの香りがする」なんてほざきながら食っている。
その光景を見て心の中で血の涙を流しているであろう芹沢がたどり着いた結論が
「こいつらはラーメンを食ってるんじゃない。旨い不味いは自分で判断できず、その背景にある情報を食ってるんだ」。
そういう悲しい経緯があるわけで、ぜひこれは作品を読んでいただきたいところ。
耳が痛い話じゃないですか。
フランスで10年修行した料理人の店。日本で1年間修行した料理人の店。
仮に味が同じだったら、どちらの店に行きますか?
芹沢の言葉のラーメンの部分を自転車やパーツに置き換えたら…
どうだろうか、自分は情報に乗っていないのか?自問自答してしまう。
自転車業界でも「ステッカーの魔法」なんて揶揄されることもある。
そのブランドのロゴステッカーが貼ってあるだけで、速くていい自転車に感じられる…
雑誌のインプレに踊らされたり、ブランドのバックストーリーに肩入れしたり…
私個人は情報を食べることが悪だとは思わない。
だってこの現代社会の中で、完全に情報を遮断することは困難だし、
それにまったく影響を受けないように切り分けるのもまた難しい。
バックストーリーのおかげでそのブランドや商品が魅力的に感じることもある。
ラーメンに例えるなら情報も調味料で味のうちかもしれないけれど、
その調味料だけでラーメンの味を評価しちゃいけないよねってことかなと。
芹沢もその価値を知っているからこそ、情報をうまくコントロールしろと主人公に語る。
自分のように自転車店をしてたって、すべての自転車に乗っているわけでもないし、すべてのパーツを試しているわけでもない。
そうなると、どうしたって商品の背景情報からそれらの良し悪しを判断するしかありません。そういう意味では、ブランドの信用というのも「情報」のひとつになるわけで。
ただ絶対に忘れちゃいけないのは、情報を活かすのは大事だけれども、それだけに頼ってはいけない、ということ。
自分はできるだけ自分自身で実感して「良い」と感じたものをお客様に提供したいし、自分の感性を大事にしたい。そんなふうに思っている。
だからこそ、芹沢の「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」という言葉を、自らを戒めるために、そして侍サイクルらしくあるために強く意識している。
ラーメンハゲ、ありがとう。
そんなこんなで、皆様におかれましてはぜひとも『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』『らーめん再遊記』を読んでいただき、ラーメンハゲの数々の名言を心ゆくまでご賞味いただきたい所存であります。
というわけで皆さんレッツ、サイクリング